東京農工大学工学部 編入体験記 (浪人)

はじめまして、僕はOTAといいます。2021年度より、東京都立産業技術高等専門学校から、東京農工大学 工学部 知能情報システム工学科 数理情報工学コースに編入学しました。どうやら僕の編入体験記には多少なりとも需要があるようです。なので、受験期や合格後にまとめていたメモを編纂しつつ、一編入体験記としてまとめておきたいと思います。

 

先に断っておきますと、僕は他の高専から大学への編入生とは些か事情が異なります。まず、僕は編入学を専門とする予備校を利用していました。最も、これだけなら案外他にも同じような人はいるものです。また、僕は高専を卒業した時点では受験失敗で進路が決まっていませんでした。要は、高専から農工大編入するにあたって1年浪人した訳です。これも実は他にもいますね。

僕が他の方々と著しく異なる点は、この2つの条件を同時に満たしている、ということに違いありません。結果的に基礎学力が高専在学当時よりずっと良くなりましたし、確かな成果として農工大編入できたのですが、卒業研究と並行して予備校に行きつつ受験勉強をする生活は意外と楽しかったとても忙しくて大変でした。浪人する、という選択肢を取ろうとした時には、編入学では珍しいこともあってか、極々一部の先生による反対と圧力に悩まされたりもしました。幸い、協力的な先生の方が多かったので、そこにはとても助けられました。担任の先生と研究室のボス、部活動の顧問の先生方には本当に感謝しています。

 

このように、「案外普通」が2つ重なった結果生まれた特級のイレギュラーが僕です。イレギュラーである分「――ああ、別にこんな選択肢を取るド変人がいるんだから、自分も思い切ってやろう。」と思わせることが出来るかもしれません。少なくとも、僕はそうなれば嬉しいです。

 

編入学で失敗した人へ、進学したかったけど就職以外無理だと諦めてしまった人へ。普通高から大学へは浪人なんてありふれているではないですか、編入学で浪人するのは無謀であるという道理なんて無いじゃないですか。大丈夫。絶対数は少ないながらも浪人して編入できた人はいます。

とはいえ、経済的に余裕が無い家庭や、工夫して捻出する術がある家庭でない限りは避けた方がいいかもしれません。というのも、少なくとも給付奨学金の申請が出来なくなってしまうからです。(2022年5月19日追記)

勉強が苦手だと諦めた人へ、自分一人では無理だと諦めてしまった人へ。とても頼もしい友達や先生方がいるではありませんか、編入学に対応できる予備校だってありますよ。大丈夫。いくらでもやりようがあります。

 

1つ報告しますが、滅茶苦茶長くなりました。1万字越え2万字強編入体験記とか僕くらいでしょう。調子に乗ると書きまくる(描きまくる)という癖と、単純に特殊な立場であることのせいとしておきます。その分、追い詰められた人に対する、僕の実体験からの助言となるようにしたつもりです。一応、ここまでと後輩へのアドバイスの全文、その他の節の最初だけ読めば要点は掴めると思います。何なら、ここから読んでくれても構いません。

 

 

 

高専までのスペック

高専に在学していた当時~農工大受験時までの自分のスペックを客観的に書いていきます。

 

成績

いきなりですが高専時代での席次です。大分あやふやで誤差が±2位くらいはありますが気にしないでください。まあ、クラスには3年までは45人はいたし、4年でも39人いた(実際はちょっと少ないかも?)のであまり大きな誤差ではないでしょう。

  • 1年: 10位
  • 2年: 8位
  • 3年: 4位
  • 4年: 8位
  • 5年: 3位

GPAは毎年100点満点中80点台にいました。この通り、一応電通大農工大の推薦の出願要件を満たす程度にはありましたが、お世辞にもいい成績とは言い難いですね。一応、授業は毎回聞いていたし、テスト対策もそれなりにはやって、課題もちゃんと出していたのでこの程度にはなりました。

 

部活と資格と卒業研究

高専では1年から4年間部活動に所属していました。高専ロボコン研究部です。僕が所属していた当時の都立品川では、筐体の設計や加工を行う機械班と、搭載する回路の作成やロボットの動作をプログラミングする回路班の2班に分かれていて、そのうち回路班でプログラミングの方をメインに担当していました。3年と4年の時には1つのチームでロボットのプログラマーをやったり、チームの4年生総出でマイコンとPC、センサー複数をイーサネットやシリアル通信で組み合わせたシステムを構築したりしています。

 

あまり資格の類は取りませんでした。単位認定とかあったりするので電気工事士とか危険物取扱者とか取るべきだったかもです。最終的なTOEICのスコアは2019年4月14日受験で370点でした。「しょぼいまま更新されてないじゃん!」という指摘に対する弁明をしますが、本当は2020年にも受けたかったのですが、新型コロナの影響でTOEICが延期したり抽選になったりしてしまったせいです。

 

ロボコンをやっていたお陰で、ある程度のプログラミングのスキルは付いたと去年の9月まで思い込んでいました思います。主に使っていたのはC++でしたが、当時は(そもそも必要無かったりしたので)テンプレートとかコンテナと一連のalgorithmライブラリとかは全く意識せずC++を実質C言語として使っていました酷い。何なら、当時はラムダ式とクラス継承とかの有難みなんて理解できていませんでした。それでもstd::vectorの素晴らしさはロボコンの部員たちに布教していました。大分勉強してきた今でも、個人的にstd::vectorとstd::mapは凄い便利な「とりあえず使っとこ♪」感覚で使用できる良いコンテナだと思います。C++界隈じゃ常識なのかな?

 

卒業研究に対しては、浪人したり色々間違えたりしたのでそこまでリソースを割けた訳ではありません。当時は、IMUセンサと筋電センサを腕に装着して腕の運動を識別する、ということを目的とした研究を行いました。研究のモチベーションは義手の制御のためです。もし進路がスムーズに決まっていたら色々と成果を出せたのかなと未練があったりします。ですので、もしかしたら農工大でも似たようなことを研究するかもしれません。

受験について

受験結果

怒涛の不合格の中に農工大の合格がキラリと光ります。横国大に落ちはしましたが、通学とか住居のことを考えると結果オーライです。でもやっぱり悔しい。

2020年度
2021年度

農工大の志望学科

  • 第一志望…知能情報システム工学科 数理情報工学コース
  • 第二志望…生体医用システム工学科
  • 第三志望…知能情報システム工学科 電子情報工学コース

農工大工学部では、知能情報を第一志望にすると生体医用を第二志望にすることができます。ぶっちゃけ落ちたくないことが半分と研究分野や科目に興味あることが半分でした。要は前者は志望できるならばその方が得である、ということです。ちなみに、農工大編入学で出願できる学科は、高専や大学の出身学科で変わります。

この順序を不審に思われるかもしれませんが、僕が大学でやりたい研究分野を考えれば、それなりには納得がいくでしょう。興味がある研究分野を(当時の)順位で並べていくと、ロボット、生体信号処理、制御理論、画像処理の順となります(ロボットは他に優秀な人がやってくれてる以上、自分ごときがやる必要はないだろう、ということが理由で今はやりたい研究分野から外れています)。

 

実は、当初はそこまで本気で農工大を志望していた訳ではありませんでした。電通大横国大はロボット関係で有力な研究室が多くあったので熱心に志望していたのですが、農工大でロボットが強い研究室が自分が入れる学科にあまりなかったからです。

とはいえ、本当にどうでも良かった訳ではなく(だったら受けてない)、それ以外で興味がある分野の研究室は知能情報も生体医用にも沢山ありました。そこが魅力的に映ったので農工大を志望したわけです。

 

編入学試験に向けての取り組み

浪人

冒頭で触れた通り、僕は5年の時に一度受験失敗して一浪しました。

 

元々僕は大学に進学すること前提で高専に進学したのですが、受験勉強のやる気が全く起こらず、あろうことか4年次の3月になるまで大学選びすらまともにやろうとしませんでした。3月になって電気通信大学Ⅱ類を第一志望の推薦と学力の候補に、農工大を第二志望にしました。そんな有様なので当然ですが、勉強も3月になるまで始めようとしませんでした。

それで大慌てで受験勉強を始めた訳なのですが、それまでの4年間勉強を舐め腐っていた自分にまともな基礎学力がある訳ありませんでした。当時の僕は、初手から都内の国立大学の数学の過去問に挑んで回答しても正誤の見極めが出来ませんでした。物理の勉強をしようと、いきなり黄色い方の基礎物理学演習をやってみて、物理の考え方や数学的な操作が全く理解できずにキレ散らかしたりもしました(それでも電磁気は比較的ちゃんと勉強していました)。英語は文法が滅茶苦茶で、長文も全く読めませんでした。今振り返ると、最早勉強の猿真似をしているだけで知識や技能を身に付けられていませんでした。

 

あっという間に電通大の推薦試験(面接と口頭試問)が目前に迫ってしまい、絶対無理だと否が応でも自覚させられました。実際、試験の口頭試問本番での僕は、数学は理系大学生にとっての義務教育レベルな簡単な問題(線形代数の基礎や接平面の方程式)すら1問も解けない、大学や社会から見た高専の地位を脅かしかねない醜態でした。

案の定落ちて、こんな学力では国公立にはどこも受からないし、受かるとしても有力な私立大ではないだろう、と理解しました。本来なら身に付いているべき数学や物理の基礎知識が一切身に付いていなかった、ということが口頭試問でよくわかったからです(この時まで基礎知識を蔑ろにし続けたことは今でも爪痕が残っています)。そこで、周りとも相談して浪人に踏み切った訳です。

浪人に踏み切るまでは葛藤とごく一部からの猛反対もありました。葛藤というか不安ですね。大体こんな感じの不安に苛まれました。

  • 浪人しようとしても途中で投げ出してしまうかもしれない
  • そもそも勉強しても行きたい大学へ行けないかもしれない
  • ずっと一人で勉強するのだから辛くて苦労ばかりするかもしれない
  • さっさと進学を諦めて就職にしてしまった方が楽かもしれない

流石に最初のかもは有り得ないなと思ったのですが、それ以外の三つは十分あり得ることだなと。初めて浪人のことを考えた時点で、浪人するなら絶対に予備校に行くことを決めていたとはいえ、それで絶対に目標を達成できるのかと言われたら首を縦には振れないじゃないですか。どれだけやっても失敗の可能性は付きまとうので、最悪の可能性ばかりが頭を過ってしまい本当に不安でした。多分、電通大の推薦入試からこの時期までが一番精神的に参っていた時期で、逆に浪人後の入試直前はそれまで積み重ねた勉強のお陰で、自信は持てなくて不安はあっても精神的にはかなり余裕があった状態だったと記憶しています。

 

最終的に浪人して国立大へ必ず編入すると決意したのは8月くらいでした。理由は大きく二つに分けられます。まず、数学、英語、物理の勉強を一からやり直したかったから。もう一つは、しっかりと事前準備をした上で電通大農工大への編入を成功させることで、どうしようもない自分を変えたかったから。実は、特定の研究室に意地でも入りたいから浪人した、とかそういうのは無いんです。

まず前者についてです。仮に今後どのような進路を辿るにしても、絶対に数学や物理、英語の基礎学力とスキルは身に付いていないといけないのは明白でした。でも当時の僕にそれが悉く無いのは最初の試験で嫌というほど理解できたので、無理に進路を決めてしまうよりも、逆に浪人して全部洗いざらい勉強しなおして、基礎知識と学力を身に付けるべきだと悟りました。それで、とりあえず数学と英語さえどうにかできれば物理は独学でもなんとかなる、という発想で浪人して予備校に行くとしたのです。これは正解でしたね。本当にほぼその通りのやり方で行って農工大に受かる程度の実力が身に付いたのですから。

次に後者です。結局のところ、どんなに編入の浪人という茨の道で苦労するとしても、僕が抱いてる夢や目標を本気で叶えようとすれば遥かに困難なことが分かり切っているので、だったら今のうちに苦境に(命綱を用意した上で)飛び込む練習をしてやろうと思いました。それに派生して、自らの命を燃やしきる勢いで取り組んで、自分が当初思い描いた目標を達成してみせたかった。前者の理由もとても重要なものでしたが、浪人の最後の決め手になったのはこれでした。

 

浪人の動機の動機

僕は自分(やチーム)で大きな目標に挑んで最大の戦果を上げるという成功体験を、(自分が認知している範囲では)一度たりとも経験したことがありませんでした。結局ロボコンでも賞を取ってチーム、部や学校に貢献したりすることができず、しかも母校は僕が引退した翌年に21世紀で初めて全国大会へ出場しました。嬉しいことではあるのですが、まるで自分がい4年間部の足を引っ張り続けていたかのように思えました。とどのつまり、自分の力で最後まで必死に努力して何かを勝ち取ったことがなかったのです。

 

周りからは悉く真逆に見られていたようで節穴共がと罵ってやりたいところですが、僕は目標の為に命を削り切るほど何かを勉強したり練習することが無い、不真面目で刹那的な享楽にばかり気が向いて半端な目標だけ叶えて来た、努力家とは程遠いロクデナシでした。これに対して、僕のことを知る人は、同世代の売れっ子女優や高専の強者たちを間近で見たせいで、それが基準になってるだけじゃないのか、と言いそうです。事実ですが。でもせめて彼らくらいの努力はしないと、申し訳なさ過ぎて誰にも一生顔向けできない。あんなゴミを人前に晒すなんてとんでもない。

イラストでも何でも、練習してプロ顔負けの成果を以て大きなコンテストで賞を取ったことはありません(区の展覧会に推薦されたことは何度かありますが)。サッカーや野球をやった時期もありましたが、周りに付いていこうとすらせず、特に勉強も練習もしませんでした。成績だって良くありませんし学問も舐め腐っていました。それなのに異常にプライドが高くて、一部を除いて下に見て自分は優秀な方だと驕っていたのです。どうしようもない。正に「井の中の蛙大海を知らず」とか「裸の王様」というやつです。

ここまで自分を客観視してボロクソに叩くようになったきっかけがあります。高専のとあるクラスメイトX氏、母方の叔母と祖母の存在です。X氏や叔母は正に自分そのものでした。祖母は碌に自分の身の回りの世話もしないし、自分を良く見せるだけ良く見せて母親や友人に寄生しようとするし、祖父が晩年に体調を著しく悪化させても医者に連れて行かず病状を悪化させて治療が出来ないレベルにまで進めました。

母は祖母の家に行く都度祖母や叔母に対してキレていたのですが、何度か聞いてるうちに気付いたのです。――これ、俺の中にもそういう資質がある――そしてわが身を振り返れば、先に挙げたような"最悪さ"が次から次へと思い当たりました。割と絶望しましたね。自分ってこんなにもどうしようもない"ナニカ"だったんだと。

 

変わらなければ。浪人して、最後まで受験勉強を続けて、編入に成功しないと一生このままだと思いました。ぎりぎりまで頑張って、努力して、そして目標達成して成功体験を得る。この一連のプロセスを経られれば、少なくとも今よりも自分から色々とやれるようにはなる筈だとしました。そうすれば、完全にとはいかなくてももっとまともな人間になれると期待したのです。

 

浪人する人が決して聞き入れてはいけないもの

ここで一つ浪人する人に向けた忠告を兼ねた怪談話をば書かせていただきます。

実は先に挙げた、浪人したら起こりうる四つの可能性は全て、学科が違って普段はあまり関りの無い、ただ一人の先生に呼び出されて直接言われたことでもあります。一つだけ「絶対に起こり得ない」のに挙げたのはこのためです。加えて、指定校推薦とかあるんだからそれ使えばいいだの、編入学で予備校とか塾なんてない(少なくとも2000年代にはできてる)し他にやって上手くいく人なんているはずがない(同世代だけでも2人いる)からやめろ、高専生は自己管理が出来ないから、浪人したら怠けて目的を見失って結局進学も就職もできずに人生詰むからやめておけだのと。

 

極端な話、この先自分が生きるためには、どんな結果であれ浪人して最後まで継続してやり遂げなければいけなかった訳ですが、その旨を伝えたら的外れでとんでもないことを返されまして。そもそもお前の夢を理系で叶えてる人なんて殆どいないから諦めろ(反証が山ほどある。阿部寛さんや岩永徹也さん、田中卓志さんが有名)、どうせ苦労するんだから今苦労しなくても良いからやめろ(こっちとしては、どうせ苦労するならいつどれだけしても同じ)、とか言われました。あと「別に井の中の蛙でいいじゃん。しょうがないよ」とか言われた覚えが。

教員が学生の夢や決意を否定するのも大概アレな話ではありますが、高専の教員が学生のことを自己管理できる筈がないと侮辱するようなことを言ってしまうのは如何なものかと思います。その時は感謝感激雨霰のあまり頭を垂れた、もう先生を主神として崇拝します、そんな振る舞いで帰りました。本心では、この件がきっかけでその先生には失望し、その後一切話すことも近付くこともしませんでした。農工大に受かったことも自分からは伝えていません。

 

呼び出された時点で既に浪人すると決めていて、反対する人もいるとは想定していましたが、まさかあんなことを言われるのは想定外でした。今思えば、「善意を装って相手のことを(的外れな意見で)否定し、それを以てコントロールしようとする危険人物」の構図です。何かの間違いで浪人を試みる人の前にもそういう手合いが現れる可能性はありますが、その時は無視した方がいいです。むしろ無視しなさい。自分の意志で浪人すると決めたなら、例え結果が駄目だったとしても、得られるリターンが大きいので最後までやり通すべきです。そもそも本気で心配して言っているのか、或いは的外れな心配をしているのではないか、ということを疑いましょう(色々と賛否が分かれる方々ではありますが、メンタリストDaiGoさんやひろゆきさんが、その辺で知っておくべきことを語ってくれています)。

ただ、リスクの塊なのは事実です。万が一失敗しても良いように準備しておいたり、そもそものリスクを可能な限り減らしておいたりするのをおすすめします。

 

そういえば、メンタルヘルスの観点で言えば上を見すぎず、かと言って下も見すぎない方が良いらしいですね。だから井の中の蛙でいるのってある意味で幸せではあります。だって普通は世界一になれる訳がないんだし、どちらを見てもキリがないんですから。

 

予備校

僕はECC編入学という、編入学を専門に取り扱う予備校に通っていました。ECCと聞くと英語学習のECCジュニアを連想する人が殆どだと思いますが、ECCグループの一つに編入学院とECCジュニアが所属しているのです。調べたら色々と他にもあるみたいでびっくりしました。「色々やってる」とは知っていましたが、まさかここまでとは思いもよりませんでした。

www.ecc-trans.com

 

さて、ここから編入学院について説明を始めます。

編入学院では理系学部への編入学に特化した理系編入と、文系学部への編入に特化した文系編入という二つの10ヶ月にも渡るカリキュラムがあります。理系ならその中で、一年間のカリキュラムの前半に受講できる英語と数学を高校の範囲から学び直すスタートコースと、後半に受講できる本格的に編入学で出てくる範囲の英語、数学、物理、小論文の書き方などを勉強するレギュラーコースに分かれています。文系でも同じようにスタートとレギュラーに分かれていて、確か経済学や心理学、法学と英語などが学べたかと思いますが、自分は断片的にしか分かりません。文系も理系も、スタートとレギュラー両方で予備校からテキストが用意されます。

別にスタートとレギュラーの両方を受ける必要なんて無くて、実際に僕の世代ではレギュラーのみを受講する人も多かったです。また、全ての科目を受ける必要も無く、任意の数科目だけを受講するということも可能です。実際に僕は数学と英語だけ受講して物理は独学で勉強しました。

大阪、神戸、京都、新宿と名古屋に校舎があります。通える範囲の人は通学することが殆どですが、実際は通えない範囲の人やスケジュールがどうしても合わない人も多いです。そのために、Webスクールとしてオンラインでも受講できるようになっています。録画された動画を再生して勉強するので、わからないところを繰り返し聞いたり、自分が聞きやすい速度で再生したりと、自分がやりやすいように勉強することが出来ます。登校してる人でも、台風や大雨で授業が中止になった時やコロナ渦では中止になった授業をオンラインで代替する時がありました。

 

レギュラーコースでは編入に直接関わる範囲を勉強できるだけではありません。過去問題の閲覧や面接の練習、志望理由書の添削、自分で解いた過去問の回答のチェックもサービスに含まれます。過去問の閲覧は一見高専生には不要に見られるかもしれませんが、大学からの編入を目指す人には数少ない過去問を手に入れるルートだし、高専生も高専に無い年度の大学の学科の過去問題があったりするので実はとてもありがたいものです。

また、3月下旬から4月上旬にかけて模試があります。主な役割は「学生に勉強が足りていないという現実を叩き付ける」こと(by数学の先生)だそうです。実際、これがかなり難しくて、当時の僕もかなり間違えた箇所が多くて大変な目に遭いました。このお陰で分かったことも多かったのでとても勉強になりました。

受験勉強

基本的なアプローチは「基礎知識を身に付けるまでは高度な応用問題や過去問に絶対に手を付けない」でした。基礎知識なしに応用問題や過去問に手を出した結果、何もわからず勉強もままならない状況に陥ってしまったので、その反省として基礎から学び直す道を選んだからです。その一環がECC編入学院なのは何度も言った通りですね。物理は自分で参考書をかき集めたりヨビノリを駆使して独学で勉強しました。物理で勉強のために本を梯子して読んだ経験はかなり良いもので、今でも一つのものを学ぶのに複数の本を梯子する癖が残りました。欠点は本が増えまくることです。メンタリストみたいな部屋と本棚が欲しくなります。

知識を得てからはずっと参考書の演習問題や過去問を周回していました。飽きる時もありましたが、基本的には問題なくこなせましたね。そこは今までFGOでボックスとかの苦行若しくは修行周回をやりまくってたせいかもしれません。

あと、横国大の受験に向けた勉強も含んでいます。

 

言うまでもないことですが、本当は以下に書いてあることを丸ごとする必要が無いように高専でしっかりと勉強するべきです。最低限の知識はそれで付くので、過去問と参考書を使って足りないところを埋めていきつつ経験を積むのが、本来あるべき姿だと思います。

数学

5年の夏休みから始めました。この時点では予備校の方はまだ始まっていなかったので、編入数学入門を使って勉強していました。最初はどうすればいいかわからず、要項を写経するという非効率的なやり方をやってしまいました。やるとしても、一通り読んでからノートに要点をメモしていくべきです。

9月あたりから予備校で講義を受けつつ、先生に腑に落ちない箇所を教えてもらって基礎を築き直しました。この時期に今までおざなりにしていた高校数学の範囲が身に付いたのが良かったです。

11月には編入数学徹底研究を中心にやるようになり、直接的な受験勉強をやるようになりました。受験勉強とは言っても、高専の授業でやってきた微分方程式とか、重積分とか、線形代数といった大学の教養範囲の再学習です。事前に入門と予備校で高校の範囲を身に付けていたことで、この範囲の数学に対する解像度が格段に改善しました。高専で流されたことを予備校でいっぱい教えてもらえて楽しかったです。

年明け前後からはずっと卒研中心で、自宅での学習はあまりできませんでしたが、予備校の予習と復習、講義のおかげでやるべき勉強はちゃんとこなせました。休む暇が無くてロボコン時代に輪をかけて死ぬかと思いましたが、何だかんだ楽しかったです。

卒業してからは、予備校の模試を経て本格的に過去問に挑むようになりました。主に取り組んだのは電通大農工大横国大です。回答のチェックは自分で関数電卓で計算したり、友人に見てもらったり、Wolfram Alphaに与えられた式を投げつけたりして行いました。

英語

始めたのは数学と同時期です。こちらも9月ごろからは予備校の先生や高専の英語担当教員に指導して頂きました。自分では頻出英文法・語法問題1000Vision Questを使って英語の初歩的な文法からやり直しました。単語を覚えるために使ったのは速読英単語 必修編です。

12月頃からやっておきたい英語長文500の長文読解問題をやり始めました。前回の受験の時に買ったのですが、当時は完全に持て余していました。この時には大分英語が読めるようになっていたので、問題なく扱えるようになりました。以降、英語の過去問は大体手に入らないのもあって、この本と予備校のテキストを使って英語を勉強することになります。卒業後は読解だけでなく、予備校の先生に添削してもらいながら英作文の練習をしました。

物理

他の2科目より遅れて、10月頃から予備校の数学の先生の勧めで物理のエッセンスを使ってまずは高校物理を学び直しました。一応、高専でも高校物理はやったのですが、授業に全くついていけずこの部分が完全に抜け落ちてしまっていたので、先生のアドバイスは本当にありがたかったです。

物理のエッセンスを一周した後は、大学の物理の部分をビジュアルアプローチ 力学ヨビノリ(予備校のノリで学ぶ 大学と数学と物理)で勉強しました。その後はまた物理のエッセンスと基礎物理学演習に戻って、力学の演習問題がほぼ完璧にできるようになるまでやり続けました。ちなみに3月に卒業するまではこんな感じで、電磁気はマセマの電磁気学を読んだ程度しか触れていません。

yobinori.jp

流石にまずいと思ったのと、力学に飽きてきたのとで卒業してから4月中はずっと電磁気中心に問題集2冊をぐるぐる回っていました。電磁気学 キャンパス・ゼミをちゃんと読んだのはこの時期です。ゴールデンウイークを過ぎて以降は、数学と同じように過去問も周回するようになりました。あと、地味に予備校の物理講座も最後の演習問題の解説講座だけオンラインで受講してましたが、これのお陰で電磁気が地に足のついた状態に出来ました。

専門科目

6月頃に大慌てで始めました。とはいっても、何だかんだでアルゴリズムと電気回路以外の専門科目はロボコン効果か基礎知識が染みついていたのでこの2科目を重点的に勉強しました。

電気回路は電気回路の基礎 第3版を使いました。まあ、収録されてる問題に良問が多いのに反して回答の解説が皆無と、あの悪名高い高専の物理みたいな仕様なのでおすすめしません。もっといい参考書があるはずです。論理回路6日でマスター!電子回路の基礎66を読んで知識の再確認を行いました。昔友人が内容しっかりしてるから読んどけと言っていたのに、その時に読まなかったことを後悔しました。アルゴリズム高専の内容が薄いくせに分かり辛い授業資料を無理やり参考にして勉強しました。みんなはちゃんと本を買って下さい。お勧めの本なら見つけました(次節参照)。

お勧めの参考書

「問題解決能力を鍛える!アルゴリズムとデータ構造」以外は受験勉強で実際に使った本です。受験勉強で使用したがあまりおすすめできない本もありますが、そういう本は文字色を変えて紹介た上で、あまりお勧めしないことを明記します。

数学

予備校のテキストも使用したのですが、これは入塾しないと買えないので割愛します。

 

編入数学徹底研究とは言わずと知れた、理系学部に編入学するならば最低限やっておくべき本の代表格です。編入学試験では、大学や高専の高学年で学ぶ数学の範囲から出題されることが多いですが、この本はそこを網羅しています。と言うことは、この本は編入学を志す時のお供にするだけでなく、高専で数学の問題集として自主的に使ったり、何かの拍子に大学の数学を復習する時にも使ったりすることが出来のではないでしょうか。少なくとも、編入学の時だけで終わらせるには勿体ない本だと思います。

ちなみに、元々の出版社が無くなったことで一度は絶版になりましたが、出版社を変えて復活しました。ですので、絶版したから受験勉強が終わったら必要な人に譲渡する、なんてことをしなくても大丈夫だし、気軽に高専生が自習の為に買うのも大丈夫です。

 

編入数学入門: 講義と演習 (大学編入試験対策)

編入数学入門: 講義と演習 (大学編入試験対策)

  • 作者:桜井基晴
  • 発売日: 2021/04/13
  • メディア: 単行本
 

編入数学入門は独学で 高校の範囲をやり直す時に使った本です。高専生は、3年時まではこの本を参考に自習すると良いんじゃないでしょうか。高専の授業で省かれがちな大事な定理や公式が載っているので、少なくとも読んでおくべきではあると思います。編入数学過去問特訓はがっつり練習したり旧帝大に挑むときのお供だと聞きますが、僕は持ってないのでコメントは控えます。これや過去問特訓もまた、出版社を変えて生き残っています。

 

線形代数キャンパス・ゼミ 改訂8

線形代数キャンパス・ゼミ 改訂8

 

 線形代数の勉強にはこれを使いました。予備校のテキストもあったのですが、災害などで写像や基底と像、線形空間といった大事なところの講義が潰れてしまったので、これを使って自力でカバーしました。最早説明不要な気がしますが、マセマの「キャンパス・ゼミ」シリーズは説明が平易なので分かりやすく、演習問題も良質なものが揃っているのでお勧めです。

英語

英語もまた、予備校のテキストも使いました。数学と同じ理由で説明は割愛します。

 

ビジョン・クエスト総合英語 (総合英語参考書)

ビジョン・クエスト総合英語 (総合英語参考書)

  • 作者:野村恵造
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 大型本
 

どちらも英文法を学び直すために使った本です。Vision Questは英文法の解説書、頻出英文法・語法問題は問題集となります。頻出は文法のトピック毎に章が分かれており、基本的に選択式の問題ですが、章の最後には誤り訂正や並べ替えの応用問題もあります。解説も細かいので役に立つと思います。

 

速読英単語 必修編[改訂第7版] (Z会文章の中で覚える大学受験英単語シリーズ)

速読英単語 必修編[改訂第7版] (Z会文章の中で覚える大学受験英単語シリーズ)

  • 作者:風早 寛
  • 発売日: 2019/03/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

単語帳にはこれを選びました。というか、予備校がこれを教科書の一つに採用していたので必然的にこれになりました。予備校が採用しているだけあって、かなり学習に使いやすい単語帳だと思います。英文と単語リストに分かれているのですが、1ページの英文一つにつき単語を複数ピックアップする、という形式になっています。英文毎に訳文があるのですが、見開きで左に英文、右に日本語訳となっているので確認がしやすく、後のページで解説も付いているので便利です。単語には品詞毎の意味と熟語が記載されています。

 

やっておきたい英語長文300 (河合塾SERIES)

やっておきたい英語長文300 (河合塾SERIES)

  • 発売日: 2004/12/16
  • メディア: 単行本
 
やっておきたい英語長文500 (河合塾SERIES)

やっておきたい英語長文500 (河合塾SERIES)

  • 発売日: 2005/05/01
  • メディア: 単行本
 
やっておきたい英語長文700 (河合塾SERIES)

やっておきたい英語長文700 (河合塾SERIES)

  • 発売日: 2005/05/01
  • メディア: 単行本
 
やっておきたい英語長文1000 (河合塾シリーズ)

やっておきたい英語長文1000 (河合塾シリーズ)

  • 作者:杉山 俊一
  • 発売日: 2007/08/01
  • メディア: 単行本
 

高専の英語の先生の勧めで、やっておきたい英語長文500を長文読解問題の練習に使いました。一般の大学受験で過去に出て来た問題を ピックアップしたもので、長文読解問題の練習に最適な本です。問題編と回答・解説編に一冊が分かれていて、解説編では段落毎に訳例と特筆すべき単語と熟語の意味が、問題の解答には解説が詳しく書かれています。

タイトルの最後に付いてる500とかの数字は収録されている問題の単語数で、要は問題集の難易度です。基本的には500か700から始めると良いと思います。東大や東工大の長文問題は物凄い長さですが、1000が練習には丁度良いのではないでしょうか。

物理
物理のエッセンス 力学・波動 (河合塾シリーズ)

物理のエッセンス 力学・波動 (河合塾シリーズ)

  • 作者:浜島 清利
  • 発売日: 2013/04/01
  • メディア: 単行本
 
物理のエッセンス 熱・電磁気・原子 (河合塾シリーズ)
 

物理の再勉強では一番最初にこれをやりました。正直言って、「高専の物理」の教科書と問題集なんかよりよっぽど物理の問題集として使いやすいです。問題の考え方や注意点、ポイントが分かりやすく書かれており、問題も初歩的なものから普通に出そうな難易度のものまで掲載されています。回答の解説もしっかりあります。

一回大学での本格的な物理の考え方に慣れてからこの本の演習に戻ると、過去問や予備校の問題集と並んで丁度良い本番の練習になりました。高校物理の範囲になっているから剛体とか出てこない、というだけでそれ以外は編入の過去問と似たような問題が多くあるからです。特に力学で顕著でした。

この二冊は物理の勉強をする高専生にも、1年生の内からぜひ使ってみて欲しいです。試験勉強で使うのに丁度良いと思います。

 

ビジュアルアプローチ 力学

ビジュアルアプローチ 力学

  • 作者:為近和彦
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

大学の範囲の力学の勉強にはこれを使いました。 フルカラーで図がCGになっているのが特徴です。特筆すべき点はありませんか、読みやすく分かりやすい参考書だと思います。ちなみに電磁気もありますが、評判は悪いようです。

 

力学キャンパス・ゼミ 改訂6

力学キャンパス・ゼミ 改訂6

  • 作者:馬場 敬之
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: 単行本
 
電磁気学キャンパス・ゼミ 改訂8

電磁気学キャンパス・ゼミ 改訂8

  • 作者:馬場 敬之
  • 発売日: 2021/02/22
  • メディア: 単行本
 
熱力学キャンパス・ゼミ 改訂5

熱力学キャンパス・ゼミ 改訂5

  • 作者:馬場 敬之
  • 発売日: 2020/03/17
  • メディア: 単行本
 

 マセマのキャンパス・ゼミシリーズは有名ですね。僕が実際に使ったのは電磁気学と熱力学だけですが、折角なので力学も置いておきます。大体言うことは線形代数と変わりません。そもそも向こうで最早説明不要とか言っちゃったけど。

 

僕はこのように、力学と電磁気学と熱力学で二つのシリーズの本を使いました。でも、もしかしたら、知識を付けるための学習では参考書のシリーズを統一しておく方が良いかもしれません。

 

基礎物理学演習 (2)

基礎物理学演習 (2)

  • 作者:永田 一清
  • 発売日: 1992/01/01
  • メディア: 単行本
 

言わずと知れた黄色い本基礎物理学演習です。 上の本たちとヨビノリで物理の基礎知識を身に付け、数学をある程度身に付けたらこれとエッセンスで練習しまくったのは先述の通りです。出版の順序は逆なのですが、エッセンスから入った自分には大学仕様のエッセンスでした。解説はありますが、初歩的なことや数学的なことは当たり前のように扱ってるので、冗談抜きでこの本からやろうとすると死にます。逆に、ある程度身に付いてからやれば恐れるに足らず、しかして最高に頼もしい本となるでしょう。流石に東大や東工大に挑む人にはこれだけだと不安が残ると思いますが、その時は更に高難易度な問題を扱うものを探してください。

 

専門科目
6日でマスター!  電子回路の基本66

6日でマスター! 電子回路の基本66

 

僕が使ったのは紙の本ですが、論理回路の勉強に使いました。電子回路で使う素子や論理回路の諸要素がそれぞれ簡潔に説明されているので、受験生でなくても回路をやるなら読んでおくといいかもしれません。先述の通り、某ロボコンの回路つよつよ同期君は、2年の時にこの本を眺めて「回路やるなら暇を見つけて読んどけ」と言ってました。…が僕が読んだのは5年になってからでした。

 

電気回路の基礎(第3版)

電気回路の基礎(第3版)

 

 電気回路の勉強にはこれを使いましたが、はっきり言ってお勧めできるものではありません。別に本文の説明はそこまで分かりにくいものではないし、演習問題だってそれなりに良い問題が揃っています。誰もが「どうしてお勧めしないの?」と思うでしょう。理由を一言で言えば「電気回路版"高専の物理"(問題集も含む)だから」です。演習問題の解答に途中式や解説が一切無い上に有効数字がガバガバです。

少なくとも問題集として使わない方が良いと思うので、もっといい本を探しましょう。それと、ごめんなさい、説明が分かりやすく感じたのは、既に電気回路を履修していたからかもしれません。

 

受験が終わったあとに紙の方を買ったのですがとてもいい本でした。受験以外でもアプリ開発をするなら絶対に必要なアルゴリズムとデータ構造やそれ以外の知識が広く網羅され、C++11のソースコードも載っていて分かりやすかったのでおすすめです。滅茶苦茶分厚くて長いですが、その分教科書として非常に優れています。

 

試験の傾向

数学、英語、理科の試験時間は90分、知能情報システム工学科の専門科目だけ120分です。ちなみに、現在の農工大工学部の編入で筆記の専門科目があるのは知能情報だけです。他は無かったり口頭試問だったりします。

試験問題については、大まかな傾向も示しますが、ちゃんと自分の目で過去問を確認してください。自分で一度解いてみてください。英語以外の問題は大学公式サイトに過去3年分はありますし、大体の高専には過去問のデータベースがあると思います。

 

数学

毎年、概ね同じような構成になっています。具体的には、それぞれ異なる分野を扱う大問4問で構成されており、その中に多くて3問程度の小問が含まれています。

  1. 微分積分学極値問題): 年度によって極値だけを求められる時と、極値を取る可能性のある点の導出と極値の導出を小問で分けて求められる時がある
  2. 微分積分学(重積分): 大体xyzの領域の体積か単なる重積分の問題
  3. 線形代数: 連立方程式固有値固有ベクトルによる対角化の問題になりやすい
  4. 微分方程式: 非同次線形2階微分方程式がよく出題されるが、年度によっては非同次の連立微分方程式が出ることもある

過去問を何年度分かやった上での個人的な印象だと、毎年電通大や横浜国大よりも辛い印象があります。主に極値問題のせいです(ただ苦手なだけ?)。逆に、重積分は初見だと頭が痛くなりますが、いざやってみるとすんなりいけて楽しいと思ってます(個人的な感想)。

 

英語

問題は2020年度編入と2021年度編入は以下の大問3問で構成されていました。著作権の保護のために門外不出となっているため、毎年このような形式になっているかは不明です。

  1. 短めの長文読解問題
  2. 長文読解問題
  3. 英作文問題: 40~50字という制限ありで、電通大の英作文と近い

門外不出、とは言いましたが、形式は本当にありふれたものです。最初の読解問題を扱う大問2問は問題集『やっておきたい英語長文』シリーズと全く同じ形式ですし、英作文だって電通大とよく似ています。長文読解は問題集ができれば良いし、英作文は先生や英語が強い友人に添削してもらうと良いでしょう。僕はそうしていました。

 

理科

物理と化学から学科ごとに指定された科目を回答します。知能情報システム工学科では物理を必修で回答しますが、学科によってはどちらか片方を任意で、或いは両方回答するところもあります。

知能情報なので化学は受験していませんし、そもそも化学が必要な大学はターゲット外だったので勉強していません。従って、ここでは物理の方を説明します。

問題の構成は大問2問です。募集要項には力学、熱力学、波動、電磁気学の4分野から2問の大問を出題することになっていますが、ここ数年は力学と電磁気学の組み合わせで出題されていました。ただ、過去問を遡ればわかることですが、普通に波動や熱力学が出題されることもあるので注意して下さい。

ここでは力学と電磁気が出た時についてのみ説明します。

  1. 力学: 剛体の運動、ばね運動、エネルギー保存や運動量保存など多岐にわたるので、一通り網羅しておくべき
  2. 電磁気学: 電場→電位→静電容量や磁界(磁束密度)→磁束→自己インダクタンスといったよくある問題が出ることも少なくないが、出題される内容はクーロン力の問題や鏡像法など多岐にわたる

 

専門科目

先述の通り、現在筆記試験があるのは知能情報だけです。それも、2021年度で初めて学科編成後の世代への編入となるので、過去の傾向となるものがありません。ですので、2021年度編入のものを基準に説明します。

2021年度編入学試験では大問5問で構成されていました。実際に解くのは3問で、大問1の計算機基礎だけ必修、後の2問は大問2と大問3、大問4と大問5からそれぞれ1問ずつ選択して回答、という形でした。

  1. 計算機基礎: 正負の2進数の加算と乗算、多ビットのビット演算、メモリのアクセスに関する問題と情報量とエントロピーに関する問題(期待値と分散も出た)
  2. 論理回路: ごく一般的な順序回路に関する問題で、横国大(電子情報システムEP)のものと似通っていた
  3. 電気電子回路: 横国大 電子情報システムEPのものと似た交流回路のインピーダンスに関する問題?(未選択なのでよくわからない)ホイートストンブリッジや交流回路の基本は抑えとくべき。電子回路と銘打ってる以上、RLCによる回路のみならず、トランジスタなどを伴った電子回路が出る可能性がある
  4. 数理・情報工学: アルゴリズムに関する問題だったらしく、どうもC言語ソースコードがあったらしい(未選択)
  5. 電磁気学: 物理で出てきたものと難易度はそう変わらない、むしろこっちの方が簡単?物理の方と同じく、一通りの電磁気学を身に付けていれば苦は無いはず

 

面接

あります。2020年度編入では合格者にはじっくりと、落ちた人には交通手段とか軽く聞くだけという、いっそ清々しいほど結果がわかりやすいものでした。

 

2021年度試験前後の流れ

ホテルも何も、農工大が物凄い近所なので自宅から会場へ行きました。ちなみに電通大もそこまで遠くないです。横国大は家と大学の最寄り駅間と大学と最寄り駅が物凄く遠くて合格した時はどうしよう、と頭を悩ませました。でも杞憂に終わりました。

 

前日

流石に試験直前なので、勉強も程ほどにして寝ました。

 

1日目

数学
  • 線形代数以外の問題は平成29年度の問題とかなり似ていた
  • 線形代数は初歩的な問題だったように思われる(線形代数を学んだなら正答しか許されない)

大問1で最初面食らってパニックに陥ったこと以外はスムーズに解けました。例年よりも簡単だったかも、とか思ってしまったり。平成29年度編入の問題がどのようなものであったかは、学校のデータベースから探すなりしてください。

 

英語
  1. 主張と反証についての長文
  2. 宇宙の歴史の研究、具体的には宇宙誕生から10億年の出来事についての長文
  3. 日本の宇宙開発についての意見を述べる英作文(40~50単語)

多少の不安はあれど、そこまで酷いヘマはしていないだろう、という感想です。そこまで難しいものではないと思います。

 

物理
  1. ばね+重力+糸+滑車(慣性モーメント有り)の問題
  2. 誘電体入り同心球コンデンサの問題

これもまた、そこまで難しくはなかったと思います。でも、今までやったことがない組み合わせだったので大問1にはビックリしました。

 

帰宅後

過去の授業ノートを眺めたり、教科書を軽く読み直したりしてさっさと寝ました。

 

2日目

専門科目
  1. 論理回路は順序回路についての問題
  2. 計算機基礎は2進数の表現と処理、メモリの特性、情報量とエントロピーが出題

僕は論理回路電磁気学を選択しました。数理…情報…?

計算機基礎が明らかな不安要素でしたが、全体的な難易度は普通くらいのものだったと思います。ですが、電磁気学はボーナス問題かな?と思うくらいには簡単で、明らかに物理で出題された問題の方が難しかったです。

 

面接

まず、事前にアンケート調査がありました。1日目にGoogleフォームのQRコードが記載されたプリントが配られ、アンケートの締め切りは専門科目の筆記試験の直前でした。アンケートでは出身校やそこでの卒業研究の内容、研究や大学院への進学の意欲、将来の展望に個人のアピールポイントについて、といった面接で聞かれそうなことでした。え、じゃあ何が聞かれたの?と言われそうですが、

  • やりたい研究分野は?
  • 併願校と志望学科はどういう状況?
  • プログラムは得意か?
  • 電子工作の経験は?

といったことが聞かれました。この時、僕の志望学科とコースの順位について疑問に思われていましたが、僕のやりたい研究分野を(ロボット以外)リストアップしたら納得して頂けました。

面接会場が広めに取られていて、換気もしっかりしていたせいなのか、あるいは短かったのでそんな暇はなかっただけなのかは分かりませんが、緊張はしませんでしたね。むしろリラックスできたかもしれません。とは言え、前年の件があったので、短い面接時間で落ちたかもと不安になりました。今思えば、面接会場の換気やソーシャルディスタンスが徹底されていたり、他の大学がいつもなら面接で聞くようなことを事前にアンケート調査していたりしたので、時短と感染拡大の防止のために実際の面接を短くしたかったのでしょう。

 

帰宅後

横浜国立大学の試験が翌週に迫っていたので、そちらの勉強を再開しました。当時は電通大横国大>農工大の優先順位でしたが、まさかこのような結果になるとは…いや、当たり前の結果でした。

合格発表

散々語った結果ですが、第一志望の知能情報システム工学科数理情報工学コースに合格しました。合格者に自分の受験番号を見つけた時はすごく嬉しかったのですが、最初は幻覚を見ているのではないかとか思ったりしました。幻覚か疑い過ぎて、現実か否かを確かめるために家族や知人にも確認してもらったりも。ともあれ、1年前の雪辱的な何かを果たせたし、浪人+卒業研究生活苦節1年の努力が報われて本当に良かったです。

 

この1週間半後、横国理工学部の結果も出ましたが撃沈しました。最初はアルゴリズムでのミス以外で理由が分かりませんでしたが、予備校に報告した時に「コロナ渦でTOEICが受験できなかったのでゴミだった頃のスコア(370点)しか提出できなかった」ということを思い出しました。完全なる自業自得ですありがとう。高専時代からコロナ渦にかけて形成してきたアレの爪痕と言うべきかもしれません。スコアの提出が遅れてもコロナ渦では補填が入るんだし、提出が遅れても良いから受けとくべきでした。

皆さんは気を付けて下さい。

 

後輩へのアドバイス

色々と長ったらしく書き連ねましたが、結局一番言いたいのは「基礎知識は学校でしっかりと身に付けようね!」ということです。僕が浪人する羽目になったのは授業も受験も舐め腐って基礎知識が皆無だったからです。これは僕の独断と偏見による意見ですが、どんなことでも最低限基礎が身に付いていれば、ある程度は何とかなると思います。これはあくまである程度です。プログラミングとか基本文法だけ知っても意味ないし、標準ライブラリや言語仕様を事細かに把握して使いこなせて初めて開発者の土俵に立てるんじゃないかしら(特にC++)。まあそれだけじゃ掃いて捨てるほどいる雑兵にしかなりませんけどね(又聞き)。イラストも音楽も、基礎知識だけあってもそこから自分の思ったものを適切に出力するだけの技術が無いと意味無いですし。聞いてるか1年半前のOTA

 

ごめんなさい、あと2つアドバイスがあります。1つはアドバイスというより一般的な大学受験での一般論かもしれません。

まず、絶対に勉強一辺倒は良くないです。断言します。筋トレを引き合いに出しますが、トレーニングとかを頑張りすぎると体が休まらずに様々な体調不良に見舞われるそうです(オーバートレーニング症候群)。同じように、ずっと勉強ばかりしてたら、頭は疲れるわ精神も疲弊するわで大変なことになると思います。適度に休んで気分をリフレッシュしましょう。どこかの京大に受かった人は「受験勉強中Twitterしてばっかだった…(´Д`)」と嘆いていましたが、むしろ当人にとって丁度良い休息時間だったのかもしれません。

www.e-healthnet.mhlw.go.jp

そして、別に編入でも浪人して良いんだぜ!、ということです。一般的な大学受験で浪人は少数派でも普通にあることなのだから、編入するのに浪人することが異常であるという道理はありません。僕は予備校に通っているので自分の力とは言い難いですが、少なくとも僕の世代には(仮面)浪人で電通大と京大への編入をやり遂げている人がいる訳ですし、編入での浪人は困難であっても不可能ではないです。卑下するような言い草でしたが、オンライン・対面で通える編入学専門の予備校があるのでその力を借りるのも1つの解です。

 

僕からのアドバイスは以上です。長々とお付き合いいただきありがとうございました。