東京農工大学に編入学してからの1年間

お久しぶりです。

農工大のOTAです。3年生の1年間が終わったら総まとめの記事を書こうと思っていたのに、新学年が始まって履修登録が終わる時期すら通り越し、GWにまでもつれ込んでしまいました。最早22年度編入生に対してはほとんど意味がありませんが、記録として残しておきます。

ここまで遅れた件について弁明をさせてください。春休みは研究室とバイトで忙しく、院試対策も大してやれずにいました。先日、研究室内のゼミで自分が発表する番が来たのですが、終わった瞬間に燃え尽きて放置していた次第です。

 

はじめに

先に、今の自分の所属を改めて示します。東京農工大学 工学部 知能情報システム工学科に所属し、現在は以前の発言を反故にして理論研究の研究室で論文と本を読んでいます。Twitterで時々「○○なんもわからん(意訳)」と呟いているのはこれが原因です。僕らの世代の編入生はB3のGPAだけで院試の筆頭免除が決まったのですが、後述するアホムーブのせいでGPA2.8という超ギリギリの成績になりました。筆頭免除は確定したみたいなので良かったですけど、もうちょっと気を付ければ余裕を持って筆頭免除を期待できたのかなと思います。

さて、辛かったか否かで言えば辛かったです。前期末の課題&試験ラッシュはもちろんきつかったのですが、後期は授業とかメンタル上の問題とかで、ずっと色々な意味で辛かったです。人間関係が出来上がっているところに割り込むことにも一定の抵抗がありました。ただ、特に後期の状況については自業自得な面も多くあります。

前期・後期ともに履修した科目は11科目(集中講義含めれば前期12、後期13科目)でした。「普通じゃね?」と感じるかもしれませんが、実はそこまでやる必要がありませんでした。認定された単位数が多かった人の場合、その時点でかなり余裕が生まれます。そもそも、農工大工学部の卒業研究は合計10単位程度になりますので、ちゃんと卒研をやりさえすれば卒業要件の単位数(130)より少ない単位(120程度)をB3までに確保しておけば良かったのです。それに、B4に一部の履修を後周りにするということも出来ます。自分の体力や進路、興味と相談しつつ、無理のない範囲で履修計画を組むべきでした…

農工大ってどんなところ?

ここでは、主に自分が通う工学部について述べるとします。

小金井キャンパス(工学部)は中央線・東小金井駅から徒歩5分程度で着き、中央線沿いということもあって都心へのアクセスは極めて良好です。駅から素直に行くと、東門から入ることになります。

東門から入るとすぐに生協と140周年記念会館(エリプス)があります。生協には例によって購買と食堂があり、他の大学と大きく異なるわけではありません。エリプスは農工大小金井CP特有の食堂で、安価でバランスよく、美味しいランチメニューが個人的おすすめポイントです。

小金井CP構内はかなり木が植えられていて野鳥(シジュウカラヒヨドリなど)がよく観察できます。スズメやハクセキレイも周辺の住宅街や公園でよく見かけます(これは東京ならどこでも同じですが…)。13号館・講義棟のすぐ近くに池のある庭園があるのですが、よくカモが来るのでみんな撮影したりして親しんでいるように見えます。キャンパス自体はそんな感じで緑に恵まれた「公園」なので、勉強や研究に行き詰まった時にリフレッシュしやすい環境ですね。謎オブジェクトとか結構あるけど…

僕が受けていたのは主にオンライン授業だったのですが、講義自体は他の理系大学と良くも悪くも変わりないとは思います。大学なので専門科目以外の選択肢も広く、地学、生物学や人文・社会学科目(簿記や文学・芸術学、心理学など多数)など色々ありました。教室の広さはまちまちですが、講義棟と13号館の教室、新1号館・グリーンホールはかなり広いです。グリーンホールはA科編入学試験の会場でもありましたし、好きだった科目がここで講義や試験をしていたので思い入れ深いです。

割と重要かもしれないことですが、農工大工学部は編入生が多いです。各学科・コースにつき10人はいるような気がしますね。A科では数理情報と電子情報合わせて120人程度いるはずですが、20人くらいは編入生だったと思います。同じくらいの割合で女子学生もいるので、工学部の入学式や初登校時には「ここって本当に工学部?」って思いました。男子学生も自分の世代の高専とはだいぶ違う…… どうでもいいけど、恋人がいる人の割合が下手すると早慶よりも高いかもです。

農学部学園祭の折、府中キャンパスに行くことがありましたが、こちらはJR国分寺駅からも京王線府中駅からも徒歩10分以上かかります。慣れずに夜にマップ無しで府中CPから帰ろうとしたら遭難しかけました…… キャンパスは小金井CPと同様に植物豊かなのですが、うっそうとしていて「森林」と見紛いかねませんでした。

編入生でよかったこと

農工大編入生で良かったことを挙げていきます。

まず、単位認定がすごく楽に進んで、認定された単位数も多かったことです。これについてはすぐ次の節で説明しますが、電通大の人(学生・OB)から聞いていた単位認定の恐怖を味わうことなく済んで助かりました。

2つ目に、A科/E科・S科の実験実習を全て受けないで済んだことがあります。S科のB1は実験実習や課題、テストでとても忙しく、A科に統合されてもそれが継続しているそうです。編入生は専門基礎科目や英語関係、B3までの実験実習が軒並み単位認定されているおかげで、高専の時のような(レポートに関する)ハードスケジュールになることが避けられました。結局別件でハードスケジュールになったりするのですが

そして、農工大の環境や人に助けられたところが多くありました。農工大の環境については先述の通りですが、内部生や教職員が親切で助かりましたし、編入生が多いことも心強かったです。変なこと・非常識なことをしなければ編入生でもすぐにみんな受け入れてくれると思います。

単位認定

他の学科がどうだったかは知りませんが、A科の単位認定はすごく楽でした。高専の時の担任の先生の連絡先をA科編入生の担任に伝えておけば、後はいつのまにか全部やってもらえてました。

最終的に認定された単位数は79でしたが、高専で第2外国語を履修していなかった人はみんな一律で79単位っぽい?高専で第2外国語を履修した人は81単位になっていた覚えがあります。僕は高専で第2外国語をとっていなかったので、通年でドイツ語を学ぶことになりました。

学業

前期

即ちモチベーション全盛期。「大学の講義(オンラインだけど)ってどんなものなんだろう!(ワクワク」という気持ちと、純粋に興味のある科目がこちらに集中していたことが主な要因でしょう。言い換えれば、新しい環境と人間関係になることが楽しみだったような気がします。個人的に好きになった科目や気になっていた科目も前期に多く集中しており、そういう意味でもモチベーションが高かったです。特に「情報セキュリティ」と「量子力学概論」、「コンピュータグラフィックス」、「共生社会政策論(2022年度では共生政策論)」の4科目が好きで、毎週楽しみにしていました。

特に、情報セキュリティは高専の頃までは微塵も興味が無かった分野だったのにも関わらず、研究してみたい分野の第一候補が一度は変わってしまう程の衝撃を受けました。編入学して最初に受けた科目というのもありますし、その数学的・情報理論的な奥深さと、日頃「なんとなく」で使っていた暗号の正体と広がりを目の当たりにしたことが主な理由ですね。専門には多分しませんが、もっと詳しく知りたいと思うようになったのは間違いなくこの科目のおかげです。

量子力学は今まで興味を持っていた分野だったというのもあり、積極的に勉強してました。成立過程からはじまる講義だったのと、既に量子科学や半導体についての知識があったので内容自体は比較的飲み込みやすかったのですが、期末試験の殺意がとても高かったです。余談ですが、先生は見た目は強面ですが声は超絶イケボです。みんなで山寺宏一さんみたいな声だと話したことがあります。

CGも同様です。実践的な演習ではなく、CG自体の理論についての科目でしたが、色々と参考になりました。「シェーディングは立体感さえ出せれば割と自由かも?」とか思いました。イラストもこの講義で得た知見は反映しているつもりです。

共生政策論は簿記の講義でした。簿記は就活などで役に立つ資格筆頭らしいですし、経済のことも全く知らないのでいい機会だと思って受けていました。

前期に受けた科目全体について言うと、やはり期末の課題と試験のラッシュは堪えましたね。試験にカンペや教科書持ち込み可の科目は多かったのですが、カンペの制約がきつくて作成に体力をごっそり持っていかれたりしました。こうなるなら、もっとしっかり授業を聞いて、試験の詳細が発表された時点から試験対策をしておくべきだったと思います。課題も似たような結論です。それでも、興味のある科目が多かったのもあって楽しかったです。

後期

初っ端から「先端○○情報数学(○○はコースに対応)」によってやる気を削がれました。この科目名ですが、実際の内容は2限から6限までずっと研究室紹介を聞いて、研究室毎に出された課題を解いてGoogle classroomに提出するという内容でした。「研究室紹介を聞けば2単位が確定で手に入る!」……と言えば聞こえはいいですが、まず研究室紹介の時間がとても長く、さらに1日で紹介される研究室の数が多いので、どんなに個々の課題が軽くても結局重くなります。これで他の科目の復習に充てる時間が減りました…… しかも、別に取らなくても何ら問題は無かったということが後でわかりました。

また、「せっかく学科が色々あって、工学部と農学部がある大学に来たんだし、面白そう」だという理由で他学科科目を取りましたが、試験で上手く行かずに落単しました。人生初です。これでGPAがガッツリ下がりましたが、講義自体は楽しかったし、他学科の編入生仲間とも仲良くなれたのでそこは良かったです。

この時期は、(元々バイトで自分の能力に絶望していた上に)夏休みに色々あってメンタルが完全に壊れていました。別に学業と関係あるわけではないので詳細は省きます。

そんなこんなで、後期は一部の科目を除いてモチベーションが皆無でした。あったとしても、先端(略)にリソースを持っていかれて復習がままならず大変でした。「関数プログラミング」は教科書が英語で、英語読解の練習をしつつ手続き型やオブジェクト指向型でないプログラミング言語に触れるいい機会だったのでモチベーションは高かったのですが、一回躓いて復習を試みたらリソース難に陥ってしまいました。

自然言語処理」とか、リアルタイムではかなり聞き流してしまっていましたが、期末課題を解くにあたって講義資料を見返したら(特に文書の特徴づけに対して)奥深さを垣間見て後悔しました。もっとしっかりやればよかった…… 「データ分析の数理」や「数理最適化(オペレーションズ・リサーチ)」も面白かったし、先日の論文購読の発表では大いに助けられました。

さて、そんなこんなで散々だった後期ですが、農工大の仕様上、集中講義抜きで11科目も取る必要はありませんでした。そこは先に触れた通りの理由です。メンタル的な問題は兎も角、履修についてはしっかりと履修案内を読み込んで、調子に乗り過ぎず現実的な範囲で頑張ろうという教訓になりました。とはいえ、折角大学に来たのだから、色々なことをやってみたい訳ですが……

課外活動

編入してすぐ、漫画研究部に入りました。農工大漫研Twitterアカウントから僕の作品も時々流してもらっていますし、他の方たちの作品も素敵なものが多いので良ければ探してみてください。農学部・工学部共通のサークルで、大学院生も在籍しているので、学園祭の時を機に一気に農学部や大学院の知り合いが増えました(それまではずっとオンラインだったので顔と名前が一致しなかった……)。

また、B4になってから、新1年生のある新規サークルについてのツイートに反応したら捕捉されて、最近はそっちの方もやれたらいいな、研究室も忙しいな、となっています。元々興味がある世界だったのでちゃんとやりたいし、自分の作風に組み込みたいですね。

研究室配属

元々、知能情報システム工学科(A科)は2019年度入学の世代(つまり僕ら)に情報工学科(S科)と電気電子工学科(E科)が統合されて生まれた学科です。研究室配属の方針が著しく異なる学科同士の統合により、(配属に限りませんが)かなりグダグダしてしまっていました。多分、2020年度入学(2022年度編入学)世代以降は大分改善されるので、安心して「こんなこともあったんだなー」くらいに思っていて下さい。

E科には編入生枠というものがあったらしいのですが、S科には無かったのでA科にもありません。これには結構ムカつきました。これで損した人が少ないのもあり、多分永遠に戻ってきません。実力で選ばれるよう、日々の努力を頑張りましょう。

また、配属時期は11月で、E科とS科を足して2で割ったような感じらしいです。元はE科の方がずっと早かったみたい。これについては、配属されたのがS科の研究室なのもあって、むしろ勉強する時間が多めに取れて助かりました。

僕の配属ですが、第一志望には弾かれました。夏休み中に見学しに行って、先端(略)の際には行かなかったのが悪かったのか、それともロボコンで全国大会に行けなかったどころか最後の大会では動かせなかったのが悪かったのかは定かではありません。正直モヤモヤしましたし、モヤモヤとイライラが極まって他大学(特に東大や横国大)に移ってやろうかと本気で思いました。

最終的に、第二志望には実際に編入学して以降一番最初に興味を持って真っ先に見学しに行った研究室を入れた結果、無事そこに配属されました。今の研究室と分野には(自分の実力と知識量以外の)不満は無いのもあり、結果的にはこれで良かったと感じています。筆頭免除が確定してない内は、進路の安全対策も兼ねて、東大や電通大の(より一般化した上で)近い分野の研究室に積極的に見学しに行ったくらいです。

正直ものづくりより向いてるかもとは思いますが、ただのダニング=クルーガー効果の可能性も否定できません。その答えは遅くとも修士号を取る頃には出るでしょう。

おわりに

農工大編入してからの1年間がどのようなものか振り返りました。

考えなしや性格の問題から大変な目に遭っていましたが、農工大はいいところです。編入生も多いですし、都内国立大学ということもあり内部生にも基本的にいい人が多いので、編入した/する方は常識的な範囲で頼った方がいいでしょう。(科目数に依らず)普通に課題も試験もきついですし。

以上です。読んで下さりありがとうございました!